朝、マンションのエレベータに乗ると、女子学生が一人、乗っていた。私はあいさつを交わしてエレベータに乗り込むと、次の階で別の女子学生が乗り込んで来た。最初にエレベータに乗っていた女子学生と同じ制服を着ているのに、互いに無言のままである。女子学生と面識のない私でさえ、朝の挨拶を事務的に交わしたというのに、二人は事務的なあいさつさえも交わさないのだろうか。もしかすると、先輩、後輩の関係で、接点がないのかもしれない。
そんなことを思っていると、最初にエレベータに乗っていた女子学生が、あとから乗ってきた女子学生に向けて指を立て、やがて二人は互いの手を結んだ。何だ、何だ?
どうやら二人は、言葉以外の何かで結ばれているようだった。もしかすると、どちらかが言葉をしゃべれないのかもしれない。指を立て、手と手を結ぶコミュニケーションは、言葉よりも深いコミュニケーションだった。二人の間に言葉が不要とはこのことだ。その後、彼女たちはまるで二人が寄り添うのが当たり前のように自転車をこいで、学校へと向かっていた。