殺りん劇場
- 駄犬は異邦人9(08/15)
- 珍しく絵を更新しました(08/01)
- 駄犬は異邦人8(07/23)
- 駄犬は異邦人8(07/21)
- 駄犬は異邦人7(07/19)
駄犬は異邦人9
2008.08.15(23:50)
こんばんは、皆様。ニュースを見て初めて、今日から夏コミだ!! と、気が付いた管理人です。もう、そんな時期なのですね。すっかり、完璧……頭になかった。本日はお墓参りでうろうろしてたら、あっというまに過ぎた感じがします。明日はお寺にお参りに行きます。
そして今夜は、駄犬のほうをご用意しました。
これのせたら、また暫く…当分、駄犬は更新出来ないかも知れません。駄犬を気に入って下さる皆様、ごめんなさい。九月は完璧に同人の原稿に追われているかなと……。
「鈴原ってよ、進学するんだっけ? 専門、それとも大学?」
「……短大だけど」
(……人の名字を間延びさせた上、語尾を無意味に上げるな)
耳障りな呼び方に、イラっとする。
左隣の男の話を聞きながら、りんは少しだけ右にずれた。目立つほどではないが、その僅かな距離が大事だった。
そもそも、進学や就職に関しては内定が決まれば、職員室の掲示板に張り出される。プライバシー保護というものがある為、学校名まで詳細にしるされていないが、専門か大学か、短大かぐらいは確かめられる。誰もが閲覧可能なのだから、わざわざ尋ねるべきでない。
しかも、りんはこの男の名前を思い出せなかった。何しろ、一度も同じクラスだった事がない。中学にはいなかったので、町外から高校を受けた外部生だろう。だとすれば、―――りんは内心顔をしかめた。
(……変な奴じゃないよな)
こんな田舎の学校に通う生徒は、大抵二種類に分かれる、地元生かそうでないか。地元生ならいい。中学の成績が悪い良い関わらず、地理的な状況で地元の学校を選んだからだ。
云うまでもなく、生徒の殆どが、自分の高校の学力レベルを理解している。だから、ここで赤点を取ってしまうと、どれだけ頭の中がヤバイか身に染みていた。それは教師にしても同じ。
その為、彼等はどうにかこうにか赤点というものから逃れるべく、努力している。りんとて、数学が平均点以下だが、他で確実に持ち直していた。特別出来がよい訳でもないが、学年の少しばかり上位を常に維持している自負がある。
しかし、部外生は違う。
本人の定住している地域の学校では進学出来ないので、こんな辺鄙な田舎の高校を選んだのだ。
故に部外生は、りんの知る限り性格も脳みそも良い方とは云えない。ハッキリ云えば、問題児ばかり。定員割れを恐れ、統廃合されることを恐れた大人達の、どうしようもない悪足掻きだった。
唯一の良心が、本当に危ない相手だけは面接でちゃんと落としているらしいこと。
だから高校では目新しい相手に会うこともある。割合は地元生に比べとても少ないし殆どがやっかいな相手なので、りんが関わることは無かった。たまに普通の生徒が部外生で来る時もあるのだが、それも年々稀になっていくばかりだ。
そして、隣の男は間違いなく部外生だろう。初詣の途中、神社で会った顔ぶれに、こんな男がいたとは。いつもと違う展開のせいで、僅かな後悔が胸に広がっていた。
「頭良いじゃん、で、何処行くの?」
「別に、そんな良い所でもないよ」
「此処より絶対マシだろ。だって、ここだと全然使えねーし。つまらなくねぇ?」
「田舎も結構好きだよ。不便だけど、それなりに」
あからさまに冷たくすれば厄介かもしれないと、適度に温度を持たせてりんは応えた。彼女の苛立ちが伝わったのか、それとも最初から思うことがあったのか。膝の上の小動物も身じろぎをする。
彼は無意識に触れた掌を感じながら、頭上の様子を眺めていた。
今回の話で、兄上とりんちゃんの関係が動くので、続きが……私も書きたいのですが、四周年と原稿に専念したいと思います。
珍しく絵を更新しました
2008.08.01(22:32)
こんばんは、皆様。団扇が生命線の管理人です。夏はやっぱり団扇です。扇風機もクーラーもない、パソコン熱で急上昇中のお部屋では、団扇が欠かせません。無いと厳しいです。本日は、兄上絵を更新しました。昨年の秋か初冬頃、サイトの15万ヒット有り難うな文字入れて、ここに載せていたものの、文字無しでちょっと大きめに切り取った絵です。
完全な新作じゃなくて、ごめんなさい。でも、バナーも新しくなって、ちょっと新鮮です。
鎧の塗りが気に入っているので(潰れちゃったけど)、その辺りを気に入って下されば嬉しいですv
同人誌の表紙を描こうと思っているのに、どうも違うもの描いてしまっています。
ですので、夏らしく暑中見舞いも用意してみました。っていうか、鉛筆書きなので、その時点でアウトっぽいです。

御母堂様っぽい感じで、暑中見舞い申し上げてみました。
美人は良いですね、もう描いていて楽しかったです。息子より好きですv
そして、癖のあるパラレルの駄犬シリーズを端的に表せないかなと、ちょっと描いてみました。宮廷編の方ですね。登場人物紹介みたいな感じで。

殺生丸さんの考えていることは、非常にくだらないことだろうな……と。そして、絶対に離す気はありません。
(ウエストじゃなくて、もうちょっと胸の方が育たないかな…とか、今度はいつ寝室に連れ込もうとか、最近忙しくて午後のお茶すら一緒に飲めないとか、そういう態度だともっと色々したくなるなとか、いっそ、このままばっくれて部屋まで行こうかなとか、自分の所よりりんの所の方が、盲点になるかも……なんて)
駄犬の兄上は、メイドロボの殺生丸様と区別、もしくは個性を出す為に変な人になった感じが、いっっぱいです。
ミリ単位も分かっちゃう人間メジャーだったり、あの顔でイベント好きだったり(対恋人用限定)、この世でりんちゃんを呼び捨てにして良いのは自分だけだったり、りんちゃん充電をしておかないとダメだったり、万年筆の破戒神だったり、もうちょっと胸が大きい方がいいかもとか思っていたり、企み無しの上目遣いで可愛いお強請りとかしてくれたらすごく嬉しいのにとか、……そんな感じで。
メイドがストイックだったので、そうじゃなくしたら、なんか変になりました(苦笑)
今度は、小学生なりんちゃんにおちょくられている兄上とか、用意したいです。
あと、拍手の中身増やしたいです。一種類だと寂しいので。
駄犬は異邦人8
2008.07.23(20:09)
こんばんは、皆様。管理人です。駄犬を打ったので早速こちらに載せておきます。
そして、コメントのお返事はは後程ご用意致します。というか、今打っています。ということで、ではでは。
今回はなんか……、どうだっていい食べ物の話で終わってしまいました(苦笑)
慣れない大音量にしかめているのだろう。眉間の縦皺こそ見えないが、この男のことだ、想像は容易い。
それでも、母がかぶせた毛糸の帽子やマフラーに、セーター。一番最後こそ関係ないが、帽子とマフラーは室内の音量を和らげるのに、一役買っているらしい。
これらは、クリスマスプレゼントに母が用意した犬専用の品。ペットを着せ替えするのはどうかと、常々思っていたりんなので、当初微妙だな…と思っていた。お金の使い道として、もっと他にもあるだろうと感じるのだ。
例えば、美味しい物を食べるや、割高のレストランに出かけるや、思い切って三段重ねのクリスマスケーキを買ってみる等々。考えるだけで、涎が出そうである。
ただ、それが有意義だと思う彼女の考えも、年頃の娘として微妙だろう。
さて、このペット衣装。初見は懐疑的だったが、実際彼に付けてみると馬子にも衣装どころか、腐っても鯛だったのだ。
可愛い生き物は無駄な飾り付けをしても可愛いことに代わりが無く、むしろその愛らしさに拍車を掛けてくれるらしい。縫いぐるみのようだとは、よく云われる讃辞だったが、これにペット用衣装が装着されると完璧に縫いぐるみに見えてしまうから、恐るべし。
元々が人間だったワンコ様なので、無駄に吠えることもなく、無駄に動くこともしない。躾の必要もなければ、散歩の必要もない。入浴もマメにしているし、毛並みの手入れもバッチリなので、りんでさえつい普通の犬のごとく可愛がってしまう。ウッカリ撫でてしまう恐怖の愛らしさ。
触れた手を見て、後悔してしまうことしばしばである。
つまり、中身がかわいげもへったくれもない王子だとしても、外見の魅力は確かだった。流石、鈴原家のアイドル犬。
けれどもやっぱり、所詮見てくれは見てくれにしか過ぎず、内側は憎いあんちくしょう。
日本のお正月を体験学習と称して、初詣に誘おうとは、確かにりんが考えたことだ。肝心の相手の了解を得なかったが、こうやって勝手にひっついてきたので、予定通りと云えば予定通りだろう。
それを考えると、別に困ることでも、溜息をつくことでも、不平不満を垂れ流したくなることでもない。お門違いだ。
(そりゃあ……連れてくる予定だったけど……だけど、だけどよ、)
そこでりんは思考を区切った。利き手で握り瘤を作ってしまう。本当は、テーブルの上にドンと、叩きつけたいところ。
自分のウーロン茶の側にあるメニューを、彼女は見た。じいっと見詰める。
(飲み食いするのを監視されるって、どーいうこと!! 何なの、何なの、私は小学生ですか、それともコレは保護者なんですかっ)
むぅ〜と、りんは唸る。
目の前のメニューには、色々な食べ物が載っていた。無論、学生のうちはアルコール関係は言語道断だが、アイスが乗った各種フロートに、かき氷。抹茶ババロアにショコラサンデー。三枚重ねのホットケーキにはジャージー牛の特農バニラアイスと国産蜂蜜がたっぷりで、デリシャスと叫びたい。
特に名物パフェは絶賛の嵐。ちょっと人口の多い街へ行っても食べられないぐらい、種類が多い。
基本の苺パフェに、チョコバナナパフェあたりならば、何処でも食べられるだろう。フルーツパフェあたりも当たり前。
しかし、パイナップル、トライアングルベリー、プリンに、マンゴーのカラフルパフェ。国名シリーズならば、チャイナで杏仁ライチパフェにイタリアンなエスプレッソパフェや、フランスのクレープパフェ、NY帰りのスイートチーズパフェ、そして最後のおおとり和風抹茶パフェ。
全部制覇してみたい彼女であるが、人の視線のこともあり、まだ全種達成はしていない。―――が、和風抹茶パフェが一番の大好物。
トロピカーナ沖縄の黒砂糖をふんだんに使った黒蜜に、名古屋人も吃驚な至高の粒餡を絡め、本場吉野葛使用のくず餅とカロリーオフの代名詞、寒天とのコラボは顎が外れるほど美味しい。しかも、京都の老舗抹茶の風味豊かなアイスで奏でる、パフェというフルハーモニーは、某少年合唱団に勝るとも劣らない。うっとりとしてしまう、夢心地。
ど田舎にもかかわらず、この凝りようったらない。
カラオケの二階にある居酒屋が作っているのだが、全くもって侮れないライナップだった。これは保健所のお姉さんが云っていた、近隣町民の糖尿病率の高さと濃密な因果関係があるに違いない。
とにもかくにも問題は、この素晴らしいメニューの数々を、りんが食せないことにあった。
あんまりにも長い間、お品書きを見詰め続けていたせいか、彼女の膝の上の小型犬が睨み付ける。その剣呑な光は、どんなお説教よりも雄弁で五月蠅そう。
さしずめ、こんな所だ。
『こんな時間にこれだけの物を食べるだと? 体重計とカロリーを考えろ、頭に綿菓子でも詰まっている訳ではないだろう。いい加減、愚考も過ぎれば脂肪だと知れ。健全な肉体は健全な食生活によって作られると、知らないのか。愚か者め』
ついでに頬でもつねられるかもしれない。その後、鬼のような悪魔のような、節食生活とストレッチを命令されるだろう。
極彩色で浮かぶ光景に、りんは萎えた。
現に最初も、パフェを頼もうとして、あの恐ろしい金色に射すくめられたばかり。仕方なく彼女はウーロン茶で我慢したのだ。
(カラオケも楽しいけどさ、パフェ食べたりするのも六割ぐらい、楽しみだったのに……)
もの悲しい胃袋を慰めるように、りんはカスタネットを手に取った。調度また新しい曲を入れたのか、友人達が歌い始める。最早食べることが無理というならば、ここはとことんカラオケで盛り上がるしかない。
彼女は一心不乱でパーカッションを叩きだす。楽しいとか楽しくないとかを越えた、鬼気迫るその叩きっぷりに、少し驚く面子もいたが気にしない。というか、気が付かなかった。
だから、隣の席の人物が入れ替わったのにも、彼女は気づかなかったのである。
様子を見ていた小型犬だけが、少しだけ不機嫌に鼻を鳴らしていた。
駄犬は異邦人8
2008.07.21(00:46)
こんばんは、皆様。管理人です。眠いです。で、今夜は今打ち終えたばかりの分を載せておきます。眠たすぎて、無駄口すらたたけません。
では、では、お休みなさいませです。
(…………はぁ)
ガンガンと響くメロディに、タンバリンやマラカスの小気味良い音が混ぜ込まれ、良いのか悪いのか。とりあえず、賑やかなのは確かだった。少しばかり、ボリュームが大きすぎるのだが。
りんは、溜息をついてウーロン茶を啜った。
カラオケは嫌いではない。むしろ貴重な娯楽である。隣町までは、車か電車かバスを使わなければ行けない場所なので、頻繁に行ける距離ではない。
さらに、自転車を使った場合、四時間はかかる。だから、飽きもしない素敵な娯楽施設だった。
(飽きるほど、遊べないからなぁ……田舎だし)
そう、本来は楽しい場所なのである。実際、りんも初詣とカラオケは楽しみだった。それがこんなにテンションが下降気味なのは、確かな理由があった。 少女の視線は下へ―――もさもさしたものが、すぐ側で蠢く。柔らかい毛並みと愛らしい顔立ち。中身さえまともであれば、文句なしのペットだっただろう。
殺生丸である。
(ああもう……なんで、コイツが付いてきてるのよ…サイテー)
りんは再び、溜息をした。
出がけ、鞄を持って玄関にむかうりんに飛びかかってきたのは、駄犬の方だった。ホームシックらしい、良く分からない状態でいたというのに、どうしてか。訳も分からず、今回ばかりはりんにくっついてくる。大晦日、いや年も明けたのだが、今まで散々人を無視してきたくせに、どういう風の吹き回しなのやら。犬顔では窺うこともできやしない。
そうこうとくっついて離れない小型犬を、りんは家族の手前乱暴には扱えなかった。ただただ、「ごめんねー、ちょっとお留守番しててね。シロチャん」などと、愛想笑いをしつつ頭を撫でる程度。けっして、放り投げたり縫いぐるみをぶつけたり、木刀で訴えてみたりとかは、出来ないのである。
しかしそれが失敗になってしまう。
何を思ったのか、母が小型犬用のセーターとマフラーと帽子を持ってきたのだ。手早く着せてしまうと、りんの目の前に彼を差し出した。
「ほらほら、シロちゃんのお支度も出来たし、連れて行って上げなさいよ。可哀相じゃない」
「な、なんでよ。だってこれから初詣に行くのに、カラオケだって行くんだし」
そもそも、神社はまだしも、カラオケの店内はペット禁止だろう。りんはそう説明しようとした。が、母は人の話を聞こうとはしてくれない。それどころか、とんでもないことを曰ってくる。
「もう、いいじゃない。ケチなこと云ってばかりだと嫌われちゃうわよ。シロちゃんはね、りんのことが大好きなのよ。あんなに懐いてるじゃない。分かってる癖に可哀相なこと云わないの!」
絶句した娘の腕に、母親はペットを押し込めるとそのまま玄関へ。娘の友達に愛想笑いで挨拶し、ぴしゃりと玄関を閉じてしまう。
反論する間もなかった。
思い出して、さらにりんは溜息をつく。ウーロン茶をストローで啜る。
そんな彼女の膝の上には、ワンコがちょこんと居座っていた。さながら、指定席かのように、彼はいたのだ。
駄犬は異邦人7
2008.07.19(20:49)
こんばんは、皆様。コメントのお返事が出来ていない、管理人です。ごめんなさいです。明日か明後日にはきちんと致します。遅れてしまって、すぐすぐ出来なくて、申し訳ないです。
そして、前の駄犬ネタの続きです。今回は存在が薄いですが、次回は王子の出番も増えているかなと思います。
ということで、続きをどうぞ。
「それより、お前さっきどうしたんだ?」
「吃驚したのよ、いきなりペットが入ってくるから。いい加減……これっきりにして、お兄ちゃん」
「何を?」
このヤロー、人の話を理解出来ないのか! と、りんのこめかみが震えたが拳に訴えなかっただけ、頑張った方だろう。一応可愛い妹なので、グーで殴るなんて非道な事はしないのだ。それが、円満家族の決まり事。
この世の兄という兄が皆そうかは知らないが、ウッカリ失言でもして亀裂をつくるのはまずい。何よりも、しょげて鬱々としている男ほど、邪魔な物は無い。そうなればそうなったで、押入にでも籠もって、一生黴でも生やしていれば良いんだと、酷い事を考えてしまうが、―――りんは造り笑顔で誤魔化した。
だから、口が裂けても筋肉ダルマなんて暴言は吐かないのである。
「あのね……また云うけど、もう筋トレなんて訳の分からない事しないでね」
そう、困惑混じりに念押しすれば、意外な所から声が上がる。
「あら、でもお母さん格好いい犬って大好きよ。警察犬なんて、ワイルドで良いじゃない」
(マジですか……お母様!)
思わぬ伏兵に、りんは唖然茫然、開いた口が塞がらない。そこへさらなる裏拳か、口内に拳を突っ込まれたような先制攻撃を受けてしまう。
「それに水泳選手の逆三角形には、お母さん憧れるわ。あの胸板逞しくって……、大胸筋は勿論だけど、僧帽筋に三角筋、あの上腕二頭筋とか付き具合がなかなか良いラインなのよね。今年の水泳の新人はいけるのよ。それに比べたら、お父さんって若い頃から華奢で。ちょっとタイプじゃなったのよね」
(えええっっていうか、僧帽筋とか三角筋って、何処の筋肉よ!!!!)
保健体育の教科書を思い出したが、娘はいまいち良く思い出せない。まあ、分からなくても良い知識なのだが、りんはちょっと気になってしまう。
しかも、「ウチのお父さん、痩せててメタボじゃなくて安心」と、思う彼女からすれば、母親の台詞が信じられない。
人の好みとは良く分からないもの。
りんからしてみれば、マッチョは皆『キモイ』のひとくくりなのだが、母は違うらしい。流石あの筋肉馬鹿な次兄を生んだだけはある。この親にしてこの息子有りと云うべきか。
更に云えば、両親のなれそめは、父の一目惚れから始まったと伯母さんが云っていた。毎日とはいかないが、それは熱心に父は母の元へと通っていたらしい。花やデートの誘いや、贈り物と云った具合に、貢いでいたと聞かされた。
そんなに頑張った父親に対して、華奢なのでタイプじゃないなんて……、ちょっと可哀相である。りんからしてみれば、マッチョよりは華奢のほうが精神衛生上、ずっと良い。
酒に酔いうたた寝中の父には、聞かせられない話である。
「筋肉無いよりは、あったと方が良いと思うのよ。お母さん、好きだし」
「母さん、やっぱり話が分かる!!! そうだろ、そうだろ? ほら見ろ、りん。男は身体だ、犬といえども肉体美は重大だぞっ!!」
水を得た何とかのように、いきなり胸を張る次兄の裸体にも、いい加減腹が立ってきた。というより、気分を害す。
「どうだ、りんの知っている奴にも俺みたいな奴はいないだろう。兄ちゃんの筋肉は一朝一夕じゃ出来ないからな」
(冗談は、筋肉だけにしろっ!!)
ついでに早く服を着ろとも、怒鳴りつけたいのだが、それでも耐えてしまうのがりんという人間。いらぬ波風を立たせて家族間にヒビを入れるのも好きではないし、これから出かけるというのに、時間を浪費するような会話もしたくない。
ただ、嫌な感じに流れている風向きだけは変えた方が良いだろう。
「お兄ちゃんやお母さんが良くても、私は嫌だからね。大体、小型犬なのにマッチョのムキムキになっちゃったら、スタイルバランスが悪いよ。シロちゃんが大型犬なら分かるけど……。だからね、ホントにホントに、ホントに、私の許可無くシロちゃんに筋トレさせないで」
そう云えば、母も「お母さんの美意識に反するわ」と言い始め、息子をたしなめてくれる。
りんはこっそり溜息をつき、それから手元のペットを見た。
忘れていたが、手の中にいる小型犬も、この微妙な話に少し動揺していたようだ。何となく殺生丸がびくついているような気がした。
(まあ……マッチョはともかく、普通に考えれば無理矢理筋トレさせられて、感激する人間はそういないよな。マゾじゃないんだから)
濡れたままだったワンコをタオルにくるみ、りんはわしゃわしゃと拭いてやる。こういう世話をしていると、中身がアレなので、相当不健全と云うべきか、不潔と云うべきか、嫌な意識の仕方をするので、りんは非常に苦手だった。
だからといって、あんな次兄には頼めないし、大切な母にも頼めない。異性たる母親に、そんな破廉恥な事をさせられるか! である。まして、父に申し訳ない心地になる。
厄日も厄日、とんだ夜になってしまった。
今夜もいつも通り、父に頼めば良かったと思う。そうすれば兄の筋肉を見ないですむし、濡れた駄犬に着替えを覗かれる事もなかっただろう。
りんはついタオルを乱暴に動かしてしまう。仏頂面で犬の世話をしていると、―――待ち人来たりて音が鳴る。
インターホーンが来客を告げていた。